カテゴリ:美味しいもの( 4 )

青葉市子ちゃんの演奏会の後、会場となった自由学園明日館の帰り道、久しぶりに立ち寄った
『カフェ アコリット』が、やはり素晴らしい場所だったので、ご紹介します。

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日曜の夜、先客は居ませんでした。
数年ぶりに訪れたアコリットの店内には、穏やかにフランス語の歌が流れ続けていました。

私が前回ここを訪れたのは、もう何年前になるでしょう。
最後に訪れたのは、私がまだ大学に通っている時で、夕方にある授業の前に
友人の通っている学習院へ遊びに来た時のことだったと思います。
今はもう単語を聴きとることすら難しくなってしまったフランス語の歌を聴いたせいか
当時、大学に通う毎日に何の疑問も不安も抱かず日々を過ごし、フランス語を学ぶ傍らで
フランス語の先生にフランスの映画や音楽について、教えてもらっていたようなことを
ふと、思い出しました。
「シャンソンが好きだったら、シャルルトレネを聴いてみて」
そう教えてくれた、短髪の女性の先生は、何という名前だったかをぼんやりと考えていると
すら、とした男性の給仕の方がテーブルにメニューとお水を運んできてくれました。

メニューの中、ケーキセットを指さし、「ケーキの種類は?」と問うと
給仕の男性は階段下を示し「あちらのショーケースに」と。
促されるままに席を立ち、ショーケースの中を覗いてみると
果物やクリームを纏う、とりどりの種類のケーキが備えられていました。
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(何かを思い出しそう)
そんな予感を胸中に抑えながら、ひとつひとつ注意深く覗き込んだ後で
下段に置かれた赤い花びらをドレスのように纏うシフォンケーキに目が留まりつつ
私は輪切りのいちじくの乗せられたタルトを選びました。
「かしこまりました」
給仕の方に小さく会釈をして、私は席に戻り、先ほどの予感の正体を突き止めようと
ぼんやりと思いに沈みました。

「お待たせいたしました」
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珈琲とケーキが運ばれ、静かにテーブルに置かれます。
各テーブルには珈琲のために二種類の砂糖が備えられていることに、その時初めて気が付きました。

グラニュー糖を選び、二杯。珈琲を注意深くスプーンでかきまぜて一口頂くと
重すぎず、口当たりのいい苦みが穏やかに体内の雑念を落ち着かせてくれているように感じます。
懐かしい味、と感じたのかもしれません。
その時私は、数年前の記憶を辿る自分の中に、一つ腑に落ちる感覚があったことを憶えています。
フォークを取って、できるだけ静かに、重そうな白いクリームを纏ういちじくのタルトを一口分切り
口に運ぶと、頭の中で小さく火花が散るほどに
(今、自分で書いてて「わざとらしくて恥ずかしい」と思ってしまいましたが
 他の言葉に言い換えられそうにないので、そのまま書いてしまうことにします)
本当に、ちょっと言葉を失うくらい美味しかったのです。

「あ、私、ここで、こうやって、ケーキを食べて、今みたいに驚いたことがある」
ケーキを食べる機会は多いものの、ケーキという食べ物に、それほど感動したことは
指を折って数える程度にしか覚えがありません。
例えば、『こけしやのサバラン』。例えば、『ヴァチュールのタルトタタン』。
例えば、『パパジョンズのチーズケーキ』。
例えば、……他に挙げるべきものがすぐに思いつかないくらいの、驚きを伴う、ケーキ。
どこで食べてみても「普通に美味しい」のが当たり前の食べ物であるからこそ
「驚くくらいに特別に美味しい」ケーキというものには、巡り合いにくいのではないかと思います。

ここを訪れていた当時の私は、このお店のことを
「目白に来たら、絶対寄ることにしている」という位置づけにしていた理由は
忘れっぽい自分に、「目白に来たのなら、アコリットのケーキを必ず頂くこと」を、
備忘録的に課していたのかも知れないなと思いました。



少なくとも、前回ここを訪れたのは5年以上は前になると思います。
当時の自分の見ていたものと、現在を生きている当時から5年後の私が
こんなふうに思考を重ねることができたのは、アコリットが何も変わらない形で
当時の記憶のまま、目白駅の傍らに存在していてくれたからだと思います。

階段を下りた地下にある穏やかでシックな空間に、一時の憩いに相応しい珈琲と
驚くほどに特別に美味しいケーキを備えて、密やかにアコリットがこれからもこの場所を
守り続けて行ってくれることを、私は祈ろうと思います。

そして、一つ、改めようと思いました。
この場所を訪れるのは、「目白に来る機会があった時」ではなくて
「特別に美味しいケーキを頂きたい時」には足を運ぼうと思ったこと。
ここのケーキを頂けば、多少の『嫌なこと』や『憂鬱さ』など
一瞬で掻き消えてしまうと思うのです。


カフェ アコリット
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実家に帰っています。

実家は岡山市で、大学進学で京都へ越して以来、実家には帰省する時くらいしか居ないのですが
今回の帰省の折には、「マーテルのパイを食べる」ということを決めていました。

実家にいた時分に、母が何度か買ってきているのを食べたことがあるだけなのですが
お店もどこにあるか知らないし、(第一私は車の免許がないので自力で辿りつけない)
素晴らしく美味しかったマーテルのパイの記憶自体、長いこと忘れていたのだけど
ひょんなことで先日思い出して、今回の帰省の目的の一つになったのでした。

母に「食べたいものある?」と聞かれた時
「マーテルのパイ」と答えると、「よく憶えてたわね」と言われながらも
母は買い出しに付き合ってくれました。



最後に食べたのは、十年近く前になると思います。
アメリカンパイの専門店だというだけあって、パイ生地が素晴らしく美味しかったのが印象深いです。
バターの匂いがして、サクサク軽くほどけて、乗せられた濃すぎないカスタードが相まって
思い出すだけでウットリしてしまうほどだった、と思い出すのですが
「記憶の中ですごく美化していて、実際食べたらそれほどでもなかったら、どうしよう」と
期待してしまう半面で、少し怯える気持ちもありました。



長らく謎のままだったマーテルの場所は、岡山駅の東口、イトーヨーカドーの裏のエリアの
両備ボウルというボーリング場のある裏手の住宅街の中の家の一軒を改装してお店にしている、という
印象のもので、知らなければ絶対に見つけることができないだろうと思いました。

店内でもお茶と一緒に頂くことはできるようでしたが、よその家の台所で頂くような感じで
喫茶店という場所ではありません。

ショーケースに並べられていたパイは6種類。
ミックスベリーのパイ、クリームパイ、アップルパイ、レモンパイ、あんずのパイ、チョコレートのパイでした。
どれも260円~300円程度。6つ全て買っても2000円にも満たず、かなり安く感じました。



今、ミックスベリーのパイを頂いているのですが、記憶に違わず、素晴らしく美味しいです。
東京でこれ売ってたら、絶対行列とか出来ると思います。本当に。
味でいえば、有名なパティシエのケーキとか、老舗の洋菓子舗にも引けを取らないです。
丁寧に手作りされたのが分かる素朴なものですが、こんなにバターの香りがして軽く
滑らかなクリームで、記憶に残るほどのケーキは
どんなに良いお店でも滅多に出会うことができないと思います。
これ、食べたことのある人は、それだけで幸せだと言ってしまっていいくらいです。



持ち帰り用のケーキで、しかも岡山で、実際地元の人にしか縁がないのかと思いきや
サイトを見てみると、ケーキ自体も、それを作るためのキットも、取り寄せることができるのですね。
ちょっとこれって、アメージングです。
素晴らしく美味しいアメリカンパイに興味のある方は是非♡


手作りアメリカンパイの店マーテル
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夏の夜、私が楽しみにしていることがあります。

お風呂から上がり、髪を乾かして、あとはもう歯を磨いて眠るだけ、という段階で
冷凍庫から1リットルのマンゴーアイスを取り出して
大きなスプーンで、ガラスのお皿に一掬い、二掬い、三掬い。

マンゴーの果肉をそのままアイスクリームにしたような濃密な匂いと色に
頬がほころぶのを感じながら
スプーンの先で、皿に盛ったアイスクリームの山から一口分を切り分けて掬い
一口ずつ、ゆっくり口の中で溶かすこと。

私は暑さに弱く、本当に苦手な季節なのですが
この寝る前にあの濃密なマンゴーのアイスクリームを食べる楽しみを思う時だけ
夏の夜は幸せだったな、と夏を遠く恋しく思うのです。

本当に格別に美味しいので、マンゴーが好きな人はぜひ♡



カルディのマンゴーアイス
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休日の朝、唐突に「とびきり美味しいフレンチトーストが食べたい」と思った時、どうしますか?

焼き色の付いた絶妙の密度でほぐれるパン
卵黄色にジットリ染み出す柔らかな熱を持った甘さと
ゴールドに光る蜂蜜の匂い
添えられた白く軽やかなホイップ

フレンチトーストに関しては、一度「食べたい」と思ってしまうと、妄想はとめどなく
自宅で作ろうと試みたり
(上手くいかなくて悲しくなったり)
「京都に居たら『スマート』に行けば好いのになあ」と思ったりと
頭の中で完成されてゆく完璧な美しいフレンチトーストを夢に見ているばかりだったのですが。

一軒だけ、見つけました。
そこで余りに完璧なフレンチトーストに出合って以来
私は、フレンチトーストに焦がれなくてすむようになりました。
完璧なフレンチトーストが食べたければ
千代田線に乗って根津まで足を伸ばせば良いと知ったことで
東京での暮らしが、どれほど心強くなったことでしょう。



根津の『cafe Nomad』を知ったのは、友人から「弟が働いている」と聞いたのが切っ掛けでした。
初めて見た外観の印象は、今どきのお洒落なカフェ、という感じで、
私は友人に教えられなければ前を通りかかっても、立ち寄らなかったかもしれません。

もう何年前になるでしょう?
初めてこのお店を訪れて、感動に言葉を失って以来
当時私は東京で大学に入り直し、夜間学部に通いながら自由きままな暮らしをしていたので
「フレンチトーストを食べたい」と思うたびに
「友達にこのフレンチトーストを食べさせてあげたい」と思うたびに
地下鉄を乗り継がなければ辿り着けない根津まで、よく出向いていました。

大学を卒業して働き始め、気ままな暮らしが終わりをつげても
上野や根津に出向いた折には、必ず訪れたいと思うお店です。



フレンチトーストのことばかり褒めましたが
喫茶店としてもとても居心地の良い素敵な場所なので
ぜひ根津をお散歩の折には、訪れてみてください。
その時には、ぜひ言葉を失う完璧さのフレンチトーストを♡

★メニュー表には『フレンチトースト』の記載はないので、ケーキセットを頼み
入り口前のケーキのショーケースに貼ってある『フレンチトースト』を選んでみてください♡
★100円プラスでアイスクリームを乗せることができるのですが
これは必ず乗せたほうがいいです。後悔しないので絶対乗せてください。美味しいから。
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