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web文芸誌『窓辺』掲載作品解説

お知らせです。
2011年2月より、拙作を掲載頂いていたweb文芸誌『窓辺』(現在は休載)ですが
この2013年3月末を以て、卒業をさせて頂くことになりました。

web文芸誌『窓辺』ブログの方で、過去掲載作品に一言コメントを書いたものを
こちらに引用しておきます。



『鋭角』

少女としてあるべきとされる姿「若さゆえの美しさ」「きれい、かわいい」――そんな評価を受けたことのない一人の少女が、早熟な同級生や世の中の同い年の子たちが迎える『恋愛』というものに対して横目で羨みを感じながら、「私は一生誰にも価値を認められることなんてきっとない」、そう信じて日々を過ごす中、あまりにも些細な、だけど彼女にとっては絶対的な、一言の評価で全てが一変するという瞬間を書きたかった窓辺初参加作品です。

友人の書家、印出氏が六本木の新国立美術館での合同展の題材として、この作品の言葉を抜粋してくれたことが嬉しかったです。
小説の中から抜粋された言葉が、書という形を得て、知らない人の心に届くと嬉しいです。
http://sanguria.exblog.jp/14442225/



『神様』

これは、小説というより、詩ですが。。
雨の屋根裏でピアノを弾く亡霊のような姉のイメージ、そしてそれを神様だと定義する妹。その関係性を一枚の絵のように、できるだけシンプルな形にしたかった作品です。



『K貝類館』

これは、今はもうなくなってしまった菊池貝類館という実在の場所がモデルです。風景は私自身が小学生の頃住んでいた西宮市の風景そのままなので、実話と言ってもいいのかもしれません。
実話といっても、経験談として人に話すのと、小説作品として形に起こすのと、気を使う部分や描写する部分は違ってくるんだなということを意識して書きました。



『繭』

女性なら、一度は過敏症のように日光を恐れた経験があるのではないでしょうか。部屋の中を遮光カーテンで閉め切って、汗をかくことを恐れて空調を保ち、部屋から出ずに過ごす。自律神経には悪そうですが、私も正直夏場はこんな暮らしがしたいです。



『Mさんの話』

酒場で聞いた嘘みたいな話、というものを形にしてみたくて書きました。読んだ方から「Mさんに恋をした」という感想を貰えて、ガッツポーズです。悲しさを滲ませてお酒を飲む愛おしいおじさんを描けていたなら嬉しいです。個人的に気に入っている作品でもあります。



『純潔』

窓辺のイベント会場で、即興で一本書けということで、ノートに手書きで書いた作品。イメージは以前からあったのですが、他人の居る状況で文章を書くということが難しかったです。もうやりません。
酒場の暗がりに美しい青年が居て、それに思いを寄せる老人を描いた作品です。「純潔さは彼の頸椎骨に結晶される」――。体の一部に焦点を当てたシリーズの一つでもあります。



『リンデン』

愛おしい死体、というものに拘泥する話を書きたくて書きました。こんな冒険譚になるとは予期せず。
リンデンとは、菩提樹です。



『足』

体シリーズ。足です。これは大学在学中に書いた短編です。当時は文章で無駄を削ぎ落とすことに心血を注いでいました。必要な言葉しか、作中にあるべきではないということは、今も信じているのですが、潔癖すぎず居られるようになったと感じている今は、当時より書くことに対して自信が付いたのかもしれません。



『夜に住む者たち』

これ、地味に自信作です。自信作というか、気に入っています。怖くないですか?
読んでくれた方、何人かに指摘された通り、舞台は井の頭公園です。



『手』

体シリーズ。手です。『足』の潔さと対比してみると、当時と書き方が変わったなと感じます。良くなったのかどうかは置いておいて、女の子の人間関係も含めて、書きたいものを描くことはできたと思っています。



『ババロア』

体シリーズ。眼球です。これも大学在学中に書いた作品。個人的には、私の代表作のつもりです。初めて自分で気に入る作品が形にできた記念の一本。ゴシックやホラーや退廃の色が濃いのも当時の特色なような。大学在学中は、ホラー・ミステリを書くための演習を取っていました。その影響もあると思います。
余談ですが、これ、京都出町柳駅前の柳月堂のババロアが美味い、っていうところからできた話です。京都行かれた方は是非。



『イメージ』

かわたさんに挿絵を頂いた二作目。大学在学中に書いたものを、全面的に書き直した作品です。誇り舞う廃墟の片隅で恋人を待つ少女人形、というものを描きたくて書いた作品です。



思ったよりも長くなってしまいました。
興味を持っていただける切っ掛けになれれば、そして作品が読んで頂いた方の心に届けば、
本当にうれしく思います。宜しくお願いします。
by pinngercyee | 2013-03-31 12:00 | お知らせ