絵本紹介 『ゆうやけのじかんです』

思いついたので、私が子供の頃に好きだった本のことを紹介しようと思います。
何十年も文庫で貸し出された実家の祖母の蔵書なので、本が汚いのはご容赦ください。。


『ゆうやけのじかんです』
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子供の頃の記憶を辿って、一番に思い出すのはこの本でした。
祖母はこの本のことを「子供の本として」それほど評価していなかったらしく
積極的に読み聞かせてくれたという訳ではありません。
祖母の蔵書庫になっている部屋の中で、幼稚園に入る前から私は一人で遊んでいて
この本を取り出しては、絵に見入っていました。

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白いワンピースを着て、白い帽子で顔が隠れた少女が一人、野原でブランコに乗っています。
『ギボギボ』と名付けられたブランコは、ひとこぎするたびに周囲の景色を変えて
少女を色んな世界に連れ出します。
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うさぎのぬいぐるみと、食べきれないほどのケーキを食べるという幻。
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海原の向こうに、真っ赤に燃える太陽が落日する瞬間を見ている時、
その赤さの最後の一滴が消える瞬間に、少女はその赤さの中へ飛び込みます。
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飛び込んだ中の世界で出会った蚊の『ポカ』とともに少女は音楽の導くままに進みます。
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音やリズムやメロディーに心が躍るまま遊ぶ少女と、もはや親友の『ポカ』。
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しかし、いずれ幻は失われ、少女はブランコをこぎ続けていた自分に気付きます。
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幻が幻であることを落胆することなく、少女は暮れゆく本物の夕日の赤さに向かって
その赤さの中に住んでいる親友『ポカ』に向かって呼びかけます。
「素敵なところにいるのねえ」「またねえ」
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これだけの内容ですが、私は子供の頃にこの本を読んで、本当に救われる部分がありました。
自分だけの見た幻の景色を、肯定してくれるという本は、あまり多くはありません。
大人は自分に見えず、子供が見たというものを、基本的に信じないものなので
自分の見た夢想や幻、そういったものを自分の中で肯定していいんだということを
私に教えてくれた一冊だと言えると思います。

ついでに子供の頃の話をすると、大人が当然という現実と、絵に描かれた物語の違いは
私は見分けることが出来ませんでした。
そのことで、小学校に上がってからも、長年不思議な子供扱いされた覚えがあります。
でもテレビのニュースでやる内容と、映画の中で繰り出される物語と
教科書の中の歴史と、昔話と、絵本の中のお話と、どこが違うというのでしょう。
現実と呼ばれることがらも、物語と呼ばれることがらも、両方本やテレビで描かれるものです。
ドイツの昔には魔女狩りがあったというし、魔法使いもいたかもしれない。
竜という生き物が居なかったかどうかなんて、そこらの大人には分からないのです。
人間や犬猫の命が重くて、虫や雑草を平気で殺していいという線引きも分からないし
私の見たもの、私の信じる現実を、大人が笑い飛ばすのも分からないという状態でした。
そういう子供を大人は微笑ましく『夢見がち』と呼ぶことも併記しておきます。

私は分別が付く前に本を与えられていたから、人よりもその兆候は強かったのだと思うのですが
現実にあるもの、ないもの、として小さなころから線引きできている子供は
それほど多いとは思いません。

そのことを、自分が子供だった頃に考えて、そして忘れてしまっている人に
この文章が届くといいなと思って、今これを書いています。
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by pinngercyee | 2012-09-17 14:47 |