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鳩山郁子さんの絵

鳩山郁子さんの、新作画集のページができていました。

リテレール公式サイト

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世の中には、美しい(と言われている)絵が
あらゆる場所に飽和するほど沢山あると思うのですが
私が今まで生きてきて、息を飲むほどに目を奪われた絵というのは
思い出しても、それほどたくさん在るわけではありませんでした。

鳩山郁子さんの絵は、私が中学生の頃に手にした本の挿絵として知ったのがはじめだったのですが
小説に添えられた控えめながら端正で静的な景色は
単色のインクで刷られているのが不思議に思われるほど、美しいものでした。

窓辺から差し込む日光に、はじける炭酸水の泡。
光の屈折を透かしたガラス瓶入りの飲み物と添えられた植物。
テーブルの上に置かれたそれらの静物を描写したスケッチのような一枚の絵が
時間の止まった永遠の午後の象徴と呼べるもののように思え、
息を潜めて何時間も見つめていたのを思い出します。

銅版画を思わせる硬質な筆致と、光と空気を透かすような美しい情景。
美しいなんて言葉では、足りないと歯痒く思います。
鳩山さんの1993年刊のspangleという一冊よりも、私にとって特別な本はありません。
少女の頃の多感な時期に触れたものだから、と思われる向きがあるかもしれませんし
実際そういった部分もあるのかもしれないですが
木漏れ日や午後の日溜まり、水琴窟の鳴る日の幻や、幻燈の夜の空気など
鳩山さんの描く永遠にも通じる密やかで硬質な結晶とも呼べるイメージは
きっと私が死ぬまで、「美しいもの」の具体的な景色として、宿り続けるのだと思います。

私が美しいと信じるものを
教養も美意識もある人に、言葉を尽くして伝えようと試みて
共感してくれる人も
理解してくれる人も
共感どころか理解すらしない人も
興味を持っているふりをするだけの人も
いることは知っています。

私が美しいと信じるものが、喜んでくれる人に届きますように。
おこがましいと思いつつも、そう願わずにいられません。

鳩山郁子さんの画集が出ますよ!
喜んでくれる人に、そう耳打ちしたい気持ちです。

鳩山郁子単行本index
by pinngercyee | 2011-11-13 23:36 | 美しいもの